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故人通話プラン《2話》1話からお読みください

景色が一回転して、
僕は一瞬気を失った。


『イテテ...』

僕は歩道にいた。
僕を跳ね飛ばした車も、
他に歩行者もいなかった。

『ひっでえな...ひき逃げじゃんコレ..』

幸い怪我は無いみたいだ。

良かった。

でもケータイがバラバラになっている。
立ち上がってバラバラになったパーツを拾い集めると、

『死亡事故多発路線』
の立て札、
側には花がたむけられている。

『ちぇっ!わかってるなら信号機ぐらいつけろよ』

とにかくケータイ、何とかしなきゃ。

幸い50メートルくらい先に、赤い看板のケータイショップが見える。

ショップに入ると、二人しかいない女性のスタッフが、それぞれ客の対応に追われていた。

腰掛けて涼みながら待つか。

でも、早くしてくんないかなぁ...

焦ってもしょうがないけどさ...

その時奥から、黒いスーツを着た男性スタッフが出て来た。

『お客様、こちらへどうぞ。』

24~25才位の若い店員だった。

『ケータイが壊れてしまったんです。』

『これはお困りですねぇ。
ちょっとそちらをお借し頂いても宜しいでしょうか?。』


店員は、僕の壊れたケータイを持って、奥に入って行くと、ものの五分と経たないうちに戻って来た。
『こちらになります。』


『はあ...?』

確かに僕のケータイだ。
画面に付いたキズ、
充電の蓋の歪み具合、

キチンと元通り。
電源も入っていて、
アドレス帳もそのままだった。

『じゃあ、あの...修理代金のお支払いを..』

『そのままお持ちくださいませ。
今回のような場合ですと、代金は頂戴致しません。』

『つまり無料と..』

『さようでございます。今後ご請求する事も一切ございません。
ご安心くださいませ。』

タダと言ってくれるのだから、ここはご好意に甘えよう。

僕は元に戻ったケータイを握ったまま立ち上がった。

『お客様、ご存知かと思いますが念のため。

亡くなられました、ご友人様との通話は、最初に4444。

4が4つでございます。通話は無料となっております。
ありがとうございました。』

『はあ~?』

何だか気味が悪いな。
でも、あの真面目そうな店員。

悪ふざけしている様子でもなかったし。

歩きながらさっきの出来事を思い出していると、公園が見えた。

少し頭を冷やそう。

《3話へ続く》


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Posted by Studio West at 2010年08月22日   03:28
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