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ノコの日記/第五話
(バイバイ、サヨナラ、
水嶋クン。
本当にありがとう。)
『ノコ...ノコー!』
そしてノコは消えた。
僕はノコに関する記憶を、全て取り戻したんだ。
いっそ忘れたままなら良かった。
またノコと会えたのに。
泣き明かした翌朝、僕は重い足を引きずりながら、ゼミに向かった。
すると、ゼミの前では、心配そうに辺りを見回す髪の長いコがいた。
『水嶋くん!』
『澤村さん、どうかしたの?』
『いえ、あなたが昨日休んでたから...。』
彼女は同じゼミに通う子で、いつも何気に僕の側にすりよってくる。
大人しい感じだけど、芯の強そうな女性だ。
『はい、これ、昨日の分のノート...。』
『あ...ありがとう。』
思えば僕はこれまで、暖かく差し伸べられた誰かの手と、すれ違いながら過ごして来た気がする。
ゼミが終わると、僕は思い切って澤村さんに話かけた。
『昨日んトコ、詳しく教えて欲しいんだ..ダメかな?』
彼女は一瞬目を丸くして、それから嬉しそうにニッコリ微笑んだ。
『いいわよ。』
ノコ、僕はもう自分の心に鍵はかけないよ。
辛い事も悲しい事も、素直に受け止めて行く。
ありがとう。
ノコ。
水嶋クン。
本当にありがとう。)
『ノコ...ノコー!』
そしてノコは消えた。
僕はノコに関する記憶を、全て取り戻したんだ。
いっそ忘れたままなら良かった。
またノコと会えたのに。
泣き明かした翌朝、僕は重い足を引きずりながら、ゼミに向かった。
すると、ゼミの前では、心配そうに辺りを見回す髪の長いコがいた。
『水嶋くん!』
『澤村さん、どうかしたの?』
『いえ、あなたが昨日休んでたから...。』
彼女は同じゼミに通う子で、いつも何気に僕の側にすりよってくる。
大人しい感じだけど、芯の強そうな女性だ。
『はい、これ、昨日の分のノート...。』
『あ...ありがとう。』
思えば僕はこれまで、暖かく差し伸べられた誰かの手と、すれ違いながら過ごして来た気がする。
ゼミが終わると、僕は思い切って澤村さんに話かけた。
『昨日んトコ、詳しく教えて欲しいんだ..ダメかな?』
彼女は一瞬目を丸くして、それから嬉しそうにニッコリ微笑んだ。
『いいわよ。』
ノコ、僕はもう自分の心に鍵はかけないよ。
辛い事も悲しい事も、素直に受け止めて行く。
ありがとう。
ノコ。
風が吹き抜け、空を見上げると、また涙がすっとこぼれた。
『水嶋くん...。』
『ごめんごめん。
何でもない。
大丈夫!』
明日はノコの命日だ。
これまで顔を出さなかったのは、家族が気を悪くしてはいけないと思ったからだ。
でも明日は行ってみよう。
もしかしたら僕も、ノコの家族も、しっかり前を見て歩み出せるかも知れない。
そんな気がしたんだ。
『え~っと...こっちだったよな、ノコんち。
あったあった、ここだ。』
チャイムを押すのには、かなりの勇気が要った。
『ごめんください。』
『は~い。』
ノコの母親が顔を出した。
『あのぉ...ぼっ、僕
水嶋といいますが...』
『よく来てくれたわ。
水嶋くん。
上がって。』
『はあ?』
ノコの家族とは、そう親しい訳でもない。
入学式と告別式で顔を合わせたぐらいだ。
なのにノコの母親は、僕をよく知ってるみたいだ。
『これ、あの子の日記帳よ。』
『日記?』
ノコが日記をつけてたなんて。
『中学の頃、水嶋くんが日記に登場するの。
高校に入ってからは、毎日のようにアナタの事ばかり書いてるわ。』
『そうだったんですか....。』
『水嶋くん...。』
『ごめんごめん。
何でもない。
大丈夫!』
明日はノコの命日だ。
これまで顔を出さなかったのは、家族が気を悪くしてはいけないと思ったからだ。
でも明日は行ってみよう。
もしかしたら僕も、ノコの家族も、しっかり前を見て歩み出せるかも知れない。
そんな気がしたんだ。
『え~っと...こっちだったよな、ノコんち。
あったあった、ここだ。』
チャイムを押すのには、かなりの勇気が要った。
『ごめんください。』
『は~い。』
ノコの母親が顔を出した。
『あのぉ...ぼっ、僕
水嶋といいますが...』
『よく来てくれたわ。
水嶋くん。
上がって。』
『はあ?』
ノコの家族とは、そう親しい訳でもない。
入学式と告別式で顔を合わせたぐらいだ。
なのにノコの母親は、僕をよく知ってるみたいだ。
『これ、あの子の日記帳よ。』
『日記?』
ノコが日記をつけてたなんて。
『中学の頃、水嶋くんが日記に登場するの。
高校に入ってからは、毎日のようにアナタの事ばかり書いてるわ。』
『そうだったんですか....。』