マブヤー・バスケット《1》

Studio West

2010年08月23日 13:07

《旧盆特別企画第二弾》
マブヤー・バスケット
作/ポチ☆新一

『ねえ、昭夫さん、これなんかどう?』

『う~ん色が派手過ぎないかなぁ?』

『大丈夫よ、体に当ててみて。ほら、似合うじゃない』

ここは那覇市内のデパートにある衣料品売り場。
明日僕が着ていく服を選んでいる。

『じゃ、これに決まりね』

僕と違って彼女の方は決断が早い。
明日の食事会も彼女一人でお膳立てをしてくれたんだ。

『美香のお父さんって、どんな人なんだろ?
僕もう今から緊張しちゃってるよ...』

『今更なによ~。大丈夫!
パパにはちゃんと言ってあるんだし、怖い人じゃないから。』

『う、うん。』

買い物を済ませてモノレールの駅まで歩いている途中の出来事だ。

『危ない!』

僕の頭上に二階の工事現場から
ガコォ~ン!
カラカラ....

鉄パイプが降ってきた。

『キャーっ!昭夫さん!』

『......』


『何か言って..大丈夫なの?』

『ワン!』

『昭夫さ....』

『ワンワン、キューン』

『美香...こっちこっち....』

『ヒッ!柴イヌ!』


美香は僕と柴イヌを交互に見比べて、ようやく状況を飲み込んだらしい。

『今救急車の手配を!』

作業員が慌てて2~3名降りてきた。
『だっ!大丈夫です!』

美香は、イヌになった僕の体を捕まえて一目散に走って逃げた。

『ガルルッ!』

『イテテっ、こらッ噛むな!このやろ!』

ビシッ!バシッ!

『み...美香....。』

僕も二人(?)の後を追って走った。

『昭夫さん!二足歩行禁止!ちゃんと四つ足で走って!
あんたはちゃんと2本の足で走りなさい!』

『ワンワン!』

道行く人はあっけにとられて僕らを眺めていた。

『一体どういうこと?』

あまり人目につかない小さな公園で三人は話し合った。
イヌも賢いみたいで、状況を理解しているようだ。

『さっき頭を打った時、
僕のマブイが外に飛び出して、それをこの犬が食べちゃたみたいなんだよ』

『どうすんのよ、も~。』

『ユタのおばぁの所に行ってみよう』

『急ぎましょう。』

僕んちの近所の、有名なユタのおばぁに、事情を説明した。

『早速マブイ込みしようね~』

イヌになった僕と、
僕になったイヌは、
おばぁの前に座り、目を閉じた。

おばぁは両手を合わせ、時折どこかの宗教の巡礼のような動きをしながら、ブツブツ唱えている。
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