ノコの日記

Studio West

2010年10月15日 01:53

秋の日の昼下がり、僕は縁側の椅子に腰掛けたまま、うたた寝をしたんだ。

風が心地よく流れ、読みかけの本がパラパラと、風に遊んでいた。

『おーい、水嶋クン。』

『ん.....?』

中庭で、髪の短い女の子がこっちに向かって手を振りながら、近づいて来た。

『あたし、誰だかわかる?』

『き、君はもしかして...!』

『そのとーり!』

『ノコの妹か!』

『ブッ!ちっがぁ~う!もお~!
本人よ。あたしがノコ!』

『おまえ..まだ成仏できないんだ?』

『ひどぉ~い!
あたしはとっくに成仏しました!』

『じゃあ何で?』

『探し物しにきたの。』

『探し物って..何を?』

『傘よ。』

『傘ぁ~?』

『あたしの人生に深く関わる筈だった人が、その傘を持っているらしくて、それが水嶋クンだったみたい。』

『お、俺が~?』

『そう。あたしも来てビックリしちゃった。』

『ノコの傘なんて知らないよ。』

『だよね~。
困ったなぁ...。』

ノコが死んだのは、高一の秋。
三年前だ。

いつも明るくて、みんなを笑わせてくれるムードメーカーだった。
顔が可愛いかと言えば、どちらかと言うと...。

 

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