ノコの日記
秋の日の昼下がり、僕は縁側の椅子に腰掛けたまま、うたた寝をしたんだ。
風が心地よく流れ、読みかけの本がパラパラと、風に遊んでいた。
『おーい、水嶋クン。』
『ん.....?』
中庭で、髪の短い女の子がこっちに向かって手を振りながら、近づいて来た。
『あたし、誰だかわかる?』
『き、君はもしかして...!』
『そのとーり!』
『ノコの妹か!』
『ブッ!ちっがぁ~う!もお~!
本人よ。あたしがノコ!』
『おまえ..まだ成仏できないんだ?』
『ひどぉ~い!
あたしはとっくに成仏しました!』
『じゃあ何で?』
『探し物しにきたの。』
『探し物って..何を?』
『傘よ。』
『傘ぁ~?』
『あたしの人生に深く関わる筈だった人が、その傘を持っているらしくて、それが水嶋クンだったみたい。』
『お、俺が~?』
『そう。あたしも来てビックリしちゃった。』
『ノコの傘なんて知らないよ。』
『だよね~。
困ったなぁ...。』
ノコが死んだのは、高一の秋。
三年前だ。
いつも明るくて、みんなを笑わせてくれるムードメーカーだった。
顔が可愛いかと言えば、どちらかと言うと...。
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