彼の隣に(短編サスペンス)

Studio West

2010年10月16日 02:22

女は仕事中にもかかわらず、深い溜め息をついた。
誰にも解決出来ない問題を抱えている。

そこへ同期のミナがやって来て、声をかけた。

『ねえヨーコ、仕事が終わったら飲みに行かない?
たまには二人で。』


『いいわ。
ここんとこ私も色々々あったから、たまには息抜きしなきゃ。
ちょっと相談にのってもらいたい事もあるのよ。』

『えっ?あたしも、ヨーコに報告したい事があって。』

『あら?』

二人は入社以来の仲良しだった。

他に同期の女子社員はおらず、先輩の社員とは、やや世代が離れていた。

『それじゃ後でね。』

仕事が終わり店に着くと、二人はビールを注文した。

ヨーコは一通り店内を見回す。
『素敵なトコね。』

『でしょう!
本社の津山さんに教えてもらったの。』

『津山さんに?』

ヨーコは怪訝そうな顔をした。

『実はぁ~、津山さんとお付き合いする事になったの!』

『ふう~ん...。
あなただったんだ...。』

『何、ヨーコ?知ってたの?』

『ちょっとね。
それで、最近会ってる?』

『何だか急に忙しいみたいで、ここ二~三日、メールだけなのよ。』

『でしょうね。
呼んでみれば?』
二人共、三杯目のビールを飲み干したところで、ヨーコは津山を呼ぶように勧めた。

『ところでヨーコの相談って何?』

『津山さんに聞けばわかるわ。』

こんどはミナが怪訝に思いながら、津山に電話をかけた。

するとタイミング良く、ヨーコのバッグの中でもケータイが鳴った。

『もしもし津山さん?』

だが、ミナの電話の相手は、目の前にいるヨーコだった。

『あなたにも...死んでもらうしかないわね..』

全てを知ったミナは、その場で失神してしまった。

『大丈夫ですか!』

ヨーコは店のスタッフの手を借りて、ミナをタクシーに載せる。

『お客さ~ん。
大丈夫かい?』

『このコったら弱いクセに、沢山飲んじゃうんですよ。
しまいにはヒトの物にまで手を出して..。』

津山さんったら、バレないように違う名前で登録してあったのね。
どうせ時間の問題なのに。

でもミナ、よかったね。
彼の隣に埋めてあげるわ。



   ~END~


 
関連記事