彼の隣に(短編サスペンス)
女は仕事中にもかかわらず、深い溜め息をついた。
誰にも解決出来ない問題を抱えている。
そこへ同期のミナがやって来て、声をかけた。
『ねえヨーコ、仕事が終わったら飲みに行かない?
たまには二人で。』
『いいわ。
ここんとこ私も色々々あったから、たまには息抜きしなきゃ。
ちょっと相談にのってもらいたい事もあるのよ。』
『えっ?あたしも、ヨーコに報告したい事があって。』
『あら?』
二人は入社以来の仲良しだった。
他に同期の女子社員はおらず、先輩の社員とは、やや世代が離れていた。
『それじゃ後でね。』
仕事が終わり店に着くと、二人はビールを注文した。
ヨーコは一通り店内を見回す。
『素敵なトコね。』
『でしょう!
本社の津山さんに教えてもらったの。』
『津山さんに?』
ヨーコは怪訝そうな顔をした。
『実はぁ~、津山さんとお付き合いする事になったの!』
『ふう~ん...。
あなただったんだ...。』
『何、ヨーコ?知ってたの?』
『ちょっとね。
それで、最近会ってる?』
『何だか急に忙しいみたいで、ここ二~三日、メールだけなのよ。』
『でしょうね。
呼んでみれば?』
二人共、三杯目のビールを飲み干したところで、ヨーコは津山を呼ぶように勧めた。
『ところでヨーコの相談って何?』
『津山さんに聞けばわかるわ。』
こんどはミナが怪訝に思いながら、津山に電話をかけた。
するとタイミング良く、ヨーコのバッグの中でもケータイが鳴った。
『もしもし津山さん?』
だが、ミナの電話の相手は、目の前にいるヨーコだった。
『あなたにも...死んでもらうしかないわね..』
全てを知ったミナは、その場で失神してしまった。
『大丈夫ですか!』
ヨーコは店のスタッフの手を借りて、ミナをタクシーに載せる。
『お客さ~ん。
大丈夫かい?』
『このコったら弱いクセに、沢山飲んじゃうんですよ。
しまいにはヒトの物にまで手を出して..。』
津山さんったら、バレないように違う名前で登録してあったのね。
どうせ時間の問題なのに。
でもミナ、よかったね。
彼の隣に埋めてあげるわ。
~END~
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